電力系統安定供給
安定な電力供給は、需要量に見合った電源および送変電設備があればそれだけで可能となるわけではなく、電力の品質の維持、系統事故への耐性の向上などのための各種制御機器およびそれらの緻密な運用が必要となります。電力系統の安定性とは、この安定供給を維持するために電力系統が備えるべき能力、性質であり、現在5つの安定性がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)によって定義されています*。
- 周波数安定性(Frequency Stability)
- 電圧安定性(Voltage Stability)
- 同期安定性(回転子角安定性,Rotor Angle Stability)
- コンバータ起因安定性(Converter-driven Stability)
- 共鳴安定性(Resonance Stability)
*N. Hatziargyriou et al., "Definition and Classification of Power System Stability
– Revisited & Extended," in IEEE Transactions on Power Systems, vol. 36, no. 4,
pp. 3271-3281, July 2021, doi: 10.1109/TPWRS.2020.3041774.
これらの安定性を支えるために、電力系統では様々な制御が行われています。例えば、周波数安定性とは、電力系統を流れる交流の電気の周波数を 50/60 Hz に維持する能力を指し、需要電力と供給電力を同量(電力の同時同量)とすることで実現されます。この周波数安定性を維持するための制御は周波数制御と呼ばれ、主に大規模電源の緻密な発電電力制御によって行われています。さらに言えば、周波数制御の中にも階層があり、急激な変動に対応する高速制御から、日々の緩やかな需要変動に対し電源運用の経済性まで考慮して対応する低速な制御まで、複数の機構が含まれています。他の安定性についても同様に、変圧器や調相設備など、様々な機器を様々な制御周期でコントロールすることで維持されています。
近年では、太陽光発電や風力発電といった、気象条件によって発電電力が変わってしまう制御が難しい電源が増え、代わりに制御が容易な火力発電が減ってきています。これにより電力系統の安定性も全体的に低下する傾向にあり、世界の各地で安定供給に支障が出始めています。エネルギーネットワークチームでは、この問題を解決するために、従来の系統安定化制御の高度化、自然変動電源や蓄電池など、今後増加してくる要素への系統安定化能力の具備といった方策について研究を行っています。